第4ターン 1945年6月〜8月 1945年夏ターン

リアクション確定 2012年9月2日

1 ミーティング
マッカーサー
キング

「すると君たちは何かね、太平洋、本土を空にして欧州に全兵力を投入しろというつもりか」
「戦力の集中は戦争の基本原理です、大統領閣下」
 ダグラス・マッカーサー国務長官が持ち前の几帳面な丁寧さをもって恭しく答えた。
 トルーマンは目をしばたかせた後、眼鏡の下の目を揉んだ。この提言についてどう答えたものかを考え込んでいるようだ。
 その様子から渋い答えそのものは決まっていると見たアーネスト・キング海軍長官が追い打ちの言葉を告げる。
「日本へは対中戦争の仲裁、排日移民法の改正といった形で恩を売ります。 また、連中が裏切ったとして元より、太平洋は守勢からの段階的攻勢転移が当初からの戦争計画です 大西洋からの戦力展開を待ってからの行動が可能です」
 トルーマンはかぶりを振った
「わかった、大筋は正しい。ただしこれは極端に過ぎる。太平洋の戦力の空白を作っては インド・豪州といった地域にも動揺がでるのみならず、国民からも不満が上がる。 よってこの計画は修正される必要がある。この点は理解してもらいたい」
 マッカーサー、キングのじっとりした目線に耐えながらトルーマンは言った。
「で、具体的には?」
 容赦のないキングの問いが投げかけられる。
トルーマンは眼鏡をとって、顔周りの油を拭うように額から顎まで手のひらで撫でて言った。
「うむ、まずは陸軍だが、西海岸に5個、メキシコ国境に2個、合計7個師団は存置しておくべきだ。 留守に州軍を充てるのもいいが、抜かりなく行動できるようにその予算を計上する必要があるだろう。 次に海軍だが、エセックス級3隻とアイオワは太平洋に残せ、アジア情勢に即応できなくなる。 その変わり新鋭艦はすべて大西洋に投入する航空隊も旧式機まで欧州に投入する必要はあるまい。1000機程度は本土に残す」
「了解しました」
 キングが淡々と応じる
「それでは、わが国務省もそれを前提に行動することと致します。時に大統領閣下、少しお疲れなのでは」
 マッカーサーの慇懃な労いに、誰のせいだとばかりの厭そうな顔つきをしてトルーマンは言った。
「そうだな、それではこれで今日のミーティングは終了とする。諸君の仕事に期待している」
 思わず漏れた息が深かったのをマッカーサーとキングは満足そうに確認すると席を立った。


2 空の友情
アーノルド
ドゥパイユ

「これから半年は制空戦闘に力を入れソ連空軍の戦力を麻痺状態に陥らせる、しかる後、重爆撃支援の下で陸軍が進撃する」
 米軍の基本戦略について、パリを訪問した米空軍総司令官に就任したヘンリー・アーノルドがドゥパイユに説明した。
「フランスとしては、メス、サン・ディジエ、ディジョンの三基地を中核とし、滑走路、予備飛行場、格納庫の大拡張に取り掛かっている。 アメリカの土木技術は優秀と聞く、是非ともその点に協力をしてもらいたい」
「ほう・・・貴国ではそうした部隊は空軍に属するのですかね」
「無論です」
「そうですか、わが国は空軍を立ち上げたばかりで補給、支援部隊の所属の切り分けがまだ調整中といった具合でして、 新しい空軍というのをどのように組織するかはまだまだ学ぶ所が多そうです」
 ドゥパイユはその言葉にアーノルドという人物に重度の仕事中毒患者、完璧主義の組織運営者としての同類の臭いを感じた。
「我が国でお役に立てることがあれば、全てやらせていただきましょう」
 アーノルドは大いに喜んだ。
「自分は先の大戦の折は病気でフランスの空で飛ぶことはできませんでした。 この度こうして翼を並べて戦えることがうれしいですよ、ドゥパイユ将軍」
「ええ、それでは帰路も道中お気を付けて」


3 天声
パットン
モントゴメリー
セー

「この度、連合軍参謀総長に就任することになったジョージ・パットンだ 今日の挨拶はひとつ、昨晩見た夢をさせてもらいたい。夢の中で、俺はケルンの戦場にいた。 ところがせっかく戦場にきたというのに何もできない。声は届かないし、銃を撃つこともできない。 ただケルンがアカに蹂躙されていくのを見るだけだった。 そこで、俺はせめてと思って司令部に駆け込んだのさ、 薄暗い地下壕だ。そこでローマイヤー将軍が指揮をとっていた」
 パットンはそこで少しトーンを落とした。
「そこでローマイヤーの戦いぶりをしばらく見学していたら、不意にスーッと周りが静かになってな  そこでローマイヤー将軍が振り返って曰く、 『私はローマイヤーの霊魂だ。私に代わり赤軍撃滅を果たして欲しい。そのための力を君に貸そう』 あまりに深刻ぶって言うものだからな。まぁ任せておけ、一年後にはベルリンに返してやると答えてやったところで目が覚めた」
 パットンがそこまで言った所でその場にいたモントゴメリーがぼそっと呟いた。
「ローマイヤー将軍はそのようないい方をする人間ではなかったがな」
 それを聞きとがめたパットンはドンと机を叩いた。
「おい、今余計なことを言った奴は誰だ!」
 モントゴメリーは嫌そうに答えた。
「私だが、話はまだ続くのか?早く作戦の詰めを行いたいのだが」
「俺の構想は今、話しただろう。来年にはベルリンへ行けるように積極果敢には行動する」
「英仏軍は疲弊しております。まずは休養を補充を重視すべきです」
「やかましい!お前がやらんというなら、米軍だけでも進撃してやる」
「どうぞ、ご随意に」
「お前、俺の前を歩けると思うなよ」
 早速、トラブルを引き起こした米英の司令官に仏軍総司令のセーが割って入る。
「まぁまぁ、ここはひとまずそれぞれの状況の開示から作戦のすり合わせをしていきましょう」
 ひとまず矛を収めた両将を見て、ベルティノーは
「やれやれ、戦争は前線でやってほしいものだ」とため息をついた。


4 アルザス追撃戦
ジューコフ
パットン

「維持は出来ない、か」
 ジューコフはスタフカからの命令を受けて、進出したアルザスを放棄し、防衛線を引き直すことを決心した。
攻勢を継続できなくなったいま、アルザス突出部は補給、戦線距離の両面で負担にしかならない。
「問題は敵の追撃をどう躱すかだな」
 この戦いは、ソ連邦にとって本戦争始って以来はじめての後衛戦闘となる。それだけに不安も募る。
「今、麾下で損耗の少ない狙撃兵軍はどれか」
「戦線左翼に展開する第20軍、21軍、24軍あたりです、他の部隊は…」
「第20軍と24軍、第1戦車軍の指揮官を集めてくれ、今すぐにだ」

ソ連軍のアルザスからの後退は、その夜に開始された。
仏軍は電信の多さから何らかの動きがあると探っていたが、
具体的な行動を確信したのは翌朝の航空偵察による報告を受けてのことだった。

「直ちに追撃を開始する」
 その報を聞いたパットンは、即座に宣言した。アルザス方面には先の大戦車戦で 疲弊したフランス軍戦車隊に代わり、アメリカ軍が交代に入りつつある。
 セーに向かってパットンは「では、後を頼む」と言って席上のヘルメットを被った。
「どちらへ?」
「アメリカ軍が戦うんだ。俺が前線にいなくてどうするんだ。調整やら補給はそちらでやっておいてくれ」
「分かった。武運を祈る」
 連絡機へと向かうパットンに、セーは頷く。足音が遠くなるのを聞いてセーはぼやいた。
「ベルティノーが二人に増えたみたいだ、今日は何時間寝られるかな」

 米第1機甲軍司令部にたどり着いたパットンは、早速戦況の把握に入る。
「前線はどれだけ進撃した?」
「現在、準備砲撃が終わり、進撃路の啓開に当たって…」
 パットンの顔がすぐに険しくなって軍司令に詰め寄る。
「おい、まさかお前は俺が来るまで何もしていなかったのか?
急げ。これは追撃戦だ。相手の喉元にどれだけ喰らいつけるかだ。 機甲軍はチーターだ、チーターのように駆けてぶん殴るんだ、俺が、俺達がビーターだ」
 パットンの迫力に座が気圧されて、司令部に奇妙な沈黙が訪れる。
「パン」
 パットンの拍手が沈黙に響きわたり、一座がハッと我にかえる
「さぁ、戦争だ。アカを殺しに行くぞ」
 パットンの声は楽しげでさえあった。

「米軍か」
 一方、前線の報告を聞いたジューコフの声は苦々しげであった。
これまでに疲弊させ、勝手を知った仏軍ならともかく、新しい軍の初陣ともなれば
士気も高かろうから犠牲が増える事が予想された。
「犠牲は少ないほうがいいが、いい機会だ。少し教育をしてやろう」

第1機甲軍は二手に分かれ、ベルフォールを西から直撃する主攻撃部隊と、 北側のビュッサンを経由し迂回してミュルーズを目指す別動部隊による殿軍突破を図った。 これに対して、ソ連は第20軍と第24軍が陣地点を構築し迎え撃った。
 戦況は米軍の優位で展開するが、ジューコフは引き続きの個別陣地での拠点死守を命じた。
 米軍の機動力は高く、第二線陣地への後退の前に殲滅されてしまう。ならば当面は殿軍に犠牲を強いてでも 他部隊の退却時間を稼ぐことを優先すべきというのがジューコフが下した冷徹な判断だった。

粘り強い抗戦に苛立ったパットンが、予備として残していた戦車師団をベルフォール=ミュールーズ間の連絡を絶とうと 動かした時、ジューコフもミュールーズ後方の虎の子の第1親衛戦車軍を投入した。

第1親衛戦車軍はまずミュールーズを襲う米別働隊の北西を迂回し、連絡線を遮蔽。 予備との合流を目指して西進した米別働隊を追い、米軍別働隊、予備隊の合流の混乱を付いて撃退し、 ベルフォールへの連絡線を確保。この段階でジューコフはベルフォールを守る第20軍に退却を下令。 予備隊と別働隊の敗走で混乱する米軍に追撃の余力はなく、ソ連はラインを超えての退却に成功した。
尚、ジューコフが直卒する第1親衛戦車軍の最後の車両が通った後、フランスが壊し、ソ連が修復したライン川の橋は再び破壊された。

ソ連軍に一定の損害は与えたが、米軍の初陣は苦いものとなった。
装備に優れて機動力そのものには富んでいるが、 まだ対機甲戦術に不慣れであり、司令部の指揮能力も十分とはいえない。 というのがジューコフがアルザス追撃線の戦闘報告に残した米軍評価である。


5 北海遥かなり〜ニコライ・クズネツォフ海軍人民委員最後の闘い〜
クズネツォフ
ルイカーン
デーニッツ

「北海の敵哨戒体制は濃密だ」
「濃密だ」
 クズネツォフの言葉をぶっきらぼうに参謀長が繰り返す。
「よって、これをかき乱さないことには」
「仕事にならぬ」
「…というわけで、遺憾ながらの出撃をすることになった」
 艦隊スタッフがその言葉に引っかかりを感じていると参謀長は続けた。
「ま、ホントはバカバカ相手を沈めに行きたいんだけどナ」
「今の戦力差では、それは無謀だという声があるのだ。私もそれを認めざるを得ない」
「つうコトデ、味方空軍の支援範囲でウロウロして帰るのが、こんかいのシゴト」
「赤衛バルト艦隊、出撃せよ」
「ドウカ、沈ンで責任とらされないようにしないとナ」

「北海の哨戒体制を密にして、引き続き敵潜水艦の活動を封じ込めることが必要だ。
 しかし、イギリス、アメリカは肝心要の大西洋航路の長大な海路を守らなければならない」
 ルイ・カーンの言葉をデーニッツが引き継ぐ。
「つまりは、フランスとドイツで北海を塞ぐことが求められるか…正直つらいな」
「敵主力に出会えば、即英空軍の支援範囲へと退却する」
「これ以上、我々の海軍が失って良い船などないからな、どうかおとなしくしてもらいたいものだ」

北海へと進出した途端に、哨戒機から敵巡洋艦見ユの報告を受けたクズネツォフは
「不幸だ」
との声を思わず漏らした。
追い回さなければ作戦目標を果たせないが、危険性は高まる。 相手が主力艦隊なら避けて帰る事も許されようが、巡洋艦相手に逃げ帰るわけにもいかぬ。
「空母から攻撃隊を出せ、そのあと適当に追撃して反転する」

潜水艦から敵艦隊海峡通過スの報を受け取ったルイカーンも頭を抱えた。 丁度、その先には巡洋艦プリンツ・オイゲンを始めとするドイツ艦隊が哨戒中であった。
「至急、近隣の艦はこれを援護して英国方面へと逃亡せよ」

一方でこの状況に好機を見たのは英空軍のダウディングである。
「ヴィルヘルムスハーフェンの仇を討たせてもらおう」
こうして、両海軍首脳が決戦はしたくないなという思いを共通させながらも海戦の幕が開かれた。

攻撃の第一手は、赤衛機動部隊に所属する空母<グラーフ・ツェッペリン><サハリン>が放った急降下爆撃隊であった。
艦戦12機、Ju87C艦爆18機からなる攻撃隊が<プリンツ・オイゲン>以下駆逐艦6隻のドイツ艦隊へと襲いかかり、 <プリンツ・オイゲン>に二発の爆撃が命中し中破、 同時刻、ソ連軍赤衛バルト艦隊の発した水上偵察機がドイツ艦隊南西に戦艦数隻からなる仏軍主力艦隊を発見し報告を絶った。

クズネツォフはこれを空母を帯同する仏軍主力と判断、機動艦隊と北海沿岸の海軍航空隊に対して 仏艦隊への全力攻撃を命令し、主力艦隊の反転を実施する。
一方、広域索敵攻撃を実施していた英空軍の爆撃隊に察知され、十数機単位の波状爆撃が行われる。
クズネツォフ率いる赤衛バルト艦隊主力は、後方に置いた空母を中継点として、次々と海軍航空隊による上空支援を実施した。 空母第二次攻撃隊、及びソ連海軍航空隊に襲われた仏軍主力艦隊は実際は空母を帯同しておらず英空軍のモスキートが護衛に付いていた。

主に旧式機が担っていた英本土からの攻撃部隊は壊滅的打撃を受けたのに対して、 クズネツォフの攻撃隊はモスキートの護衛をかき分けて、攻撃隊を内側へと送り込むのに成功した。
しかし、空母を中継点とした行動は航続力や搭載能力の関係から途中で破棄せざるを得ない機も多数発生した。

相互の空襲の結果、 ソ連海軍が<リュッツオウ>が沈没し、<ソヴィエツキー・ソユーズ><マクシム・ゴーリキー>に損害を受けたのに対し、 フランス海軍は<ダンケルク>、駆逐艦2隻沈没、<リシュリュー><ストラスブール>が損傷した。
 代償として英空軍が失った機体は100機を超え、ソ連海軍航空隊もまた70機程度を喪失した。

更に赤衛機動艦隊にはドイツ潜水艦隊が襲撃をかけ、巡洋戦艦<クロンシュタット>が損傷した。

クズネツォフはこれで北海の警戒網には大きな空白が生じたとして作戦を撃ち切り、 ルイ・カーンは穴埋めの手配として、新編された仏第二艦隊の投入を命じて撤収を命じた。
ついに両国主力艦隊はお互いの姿を直接見ずに海戦は終局を見るのだった。

 クズネツォフは本作戦をもって「以後の作戦に見通しなし」として海軍人民委員、赤衛艦隊司令長官を辞任。
 自筆の命令書により、中将に降格しボルガ川河川砲艦部隊指揮官へと転属した。


6 自由の旗手
アデナウアー
デーニッツ

「ここに、ローマイアー将軍以下、ワイマール共和国の為に死んだ全ての者に哀悼の意を捧げ、黙祷」
 アデナウアーのキレのあるドイツ語がロンドンウェンブリー・スタジアムに響いた。
 参列者は主に亡命したドイツ人、自由ドイツ将兵だが、同盟者である英仏幹部、一般のロンドンっ子の姿も数多ある。
 黙祷が終わり、アデナウアーの演説が再開される。
「我々は1人の英雄を失った」こう切り出したアデナウアーの声を遮ってヤジが飛んだ「誰のせいだ」「英雄は1人じゃないぞ」
 アデナウアーはその声にすっと目をつぶり、続くヤジがないか耳をすませた。
「…私は諸君に詫びねばならない。私によって、ワイマール共和国が失われた事を。だが、私の心の火は消えてはいない。君たちも同じであろう。ドイツの山河、残された家族を思う火があるはずだ。来るべき日、私も銃を手にドーバーを超える、諸君もそれに続いてくれるとそう信じている」
 演説の後にヤジは飛ばなかった。弛緩していた自由ドイツに一つの火が点ったのだ。
「諸君を率いる人物として、カール・デーニッツを国防大臣に任ず」
「有難く拝命致します!」
 起立して敬礼を返すデーニッツに一斉に拍手が沸き起こる。その狂騒に負けぬ声でアデナウアーが拳を固め声を張る。
「起てよ国民!、ジーク、ドイッチュラント!」
「「ジーク、ドイッチュラント!」」

7 穴二つ
ベルティノー
ウボレヴィッチ

「ああ、面白くない」
 軍の休養計画、マジノ線の再構築に関わる事務を片づけながらベルティノーは嘆いていた。
実践家たることを旨をとしているベルティノーにとっては、この類の作業というのは苦痛を伴う作業であった。
 とはいえ、事務作業に対して無能ではない。パラパラを計画をめくっているうちに問題を発見する。
「おい、この部隊の補充が滞っているのはどういうことだ」
「ああ、アルジェリア情勢の不穏化にともなってアフリカ人部隊の動員が遅れております」
 打って響くように回答する参謀にベルティノーは満足気に頷いた。こいつは出来るな、仕事を押し付けよう。
「アルジェリアか…以前赴任したこともある。情勢は急迫しているのか」
「いえ、切迫はしていませんが、いろいろと滞りが出る程度には」
「…本国にそういった空気はまだ波及はしていないだろうな、あったらコトだ」
「今のところ大丈夫でしょう。内務省はしっかり仕事をしとります」
「わかった、じゃあ、こちらの部隊の補充な、ヴェトナム帰りの連中がそろそろ戻ってくるだろ、それで埋めるように統幕に掛けあっておけ」
「あ、あの」
「何だ?」
「部隊の再編について私案を考えているのですが、ご覧いただけないでしょうか」
「要約はあるか?」
「はい、こちらです。前線の軍から自動車化歩兵を引き抜き、戦車軍を戦車5個、自動車化歩兵3個の8個師団編成にします。 歩兵軍の防御の柔軟性は減りますが、機動戦の戦力が増強されます。 また南部軍集団の第9軍を解体し、そこから生まれた剰余の歩兵師団を自動車歩兵の代わりに各軍に補充し、各軍は歩兵8個師団とします」
「わかった、合わせて上にあげておけ」

「我々はマジノのような要塞を作るわけではない」
 ウボレヴィッチはスタッフを前に言った。ソ連は旧ドイツ国境に防衛の第一線を構築しつつあった。
「確かに、マジノ要塞は堅固であった。しかし、あの強度を誇る要塞を作る予算を攻撃に向けていればそもそもドイツで破れなどはしなかっただろう。そして、仮に迂回ルートを通っておれば、何の意味も成さぬものとなっていただろう」  そこにはマジノへの正面攻撃を行った自らの作戦への苦渋が見て取れた。
「我々の防御は違う。より能動的かつ殺戮的なものだ。ジューコフの示した通り、防御は反撃の前段に過ぎぬ」
 ウボレヴィッチの作戦では、防御は固定的なものではなく複線の陣地を縦横に使っての機動戦を展開する予定である。
 戦略単位の機動殲滅戦を繰り返してきたウボレヴィッチは、その成算は十二分に持っていた。
「肝心の機動戦力をドイツ人に預けるのは些か不安があるが、な」

8 同盟として枢軸がぶれている
ピドー
ドゴール
チャーチル

「ふうむ、イタリア・スペインとの防共協定は上手くいったな」
「バチカンを動かしたのは効きました」
 ド・ゴールはピドーと祝杯を上げていた。仏伊西の三国による防共協定締結によって、 ラテン圏から共産勢力排除の共同体が成立。これによりイタリアは東欧への支配的権益を約され イタリア、スペインはフランス戦争需要を満たすことで生産力を向上させる機会を得た。

この点に大いに不快感を示したのはバイエルンだった。その中にバイエルンより安価に 自由ドイツの武器ライセンスをイタリア、スペインに提供する旨が含まれていたからだった。
「ヒトラーももう吠えるだけしかできぬだろう」
「そういえば、この報を聞いてあわててソ連のイタリア大使が大統領府にかけこんで来たとか。完全に先手を打てました」
 ニコニコとピドーも追従する。アメリカの参戦、西側の戦時通商関係会議の再開と深化という良いニュースが続いた事で 溜まった心労からもいくらか開放されているのだった。
 しばらくぶりの心地良い酒気を、せわしげなノックが遮った。
「イタリア大使館から至急電です。トロツキーがミラノを訪問し、バルボ統領との会談に臨んでいるとの報」
 ド・ゴールはグラスを取り落とし、ピドーは持っているグラスを床に叩きつけた。

 トロツキーは復興中のミラノを訪れ、ムッソリーニの被殺地に献花をして弔問。
犯罪協力者の引渡しとフランスの空爆被害にあった市への復興援助を約束し、市民に万雷の拍手で迎えられた。
ローマまで同行したトロツキーとバルボは投合して、ムッソリーニが残したソ連ーイタリア間の不可侵条約を確認、即座に批准した。 ローマの議会でトロツキーは「一部冒険主義者の暴発を阻止するために、最大限の自己批判と統制を行う。 また戦争復興のための人道支援を実施する」と約束し、概ね好意的に受け取られた。

その後の動きを見れば、イタリアが非公式にフランス・ソ連の両陣営から
自前のブロック圏の樹立を黙認されたのは明らかであった。
独自路線を確立しつつあるイタリアと反共を明らかにしたスペインの間には隙間風が吹いていた。


トロツキーに遅れてイタリア入りすることとなったチャーチルの表情は硬かった。
本来は防共協定への英国の参加打診や地中海での協力行動を求めるためのものだったが、
ソ連との劇的な関係改善をうけて、再びイタリアとの関係性は緊張感のあるものへと回帰しつつあった。
そんなチャーチルをニコニコと笑んでバルボは歓迎した。
「日本への共同戦略の提案、誠に結構なことです。相手が言うことを聞いてくれるかどうかは知りませんが お伝えしておきますよ。それと地中海から戦力を引き上げるそうですが、何かあったらイタリアをお頼りください。 植民地防衛の観点からはマグレブに反動勢力の手が伸びるのは拒否したいですからな」
 全体として白々しさが漂った会談の最後にバルボは握手を求めて言った。
「首相閣下、この手はトロツキーとも繋がっております、平和を求めるなら仲裁にいつでも入りますよ」
 バルボの手をとった、ぶすりとしたチャーチルの握手写真はこの時期の英国の苦悩を納めたものとして後世に伝わることとなる。

 枢軸の足並みが乱れつつあるのは、極東でも同じであった。 そもそもどのような足並みを取るかさえ、日本は不明瞭であった。
 東南アジアの独立に勢いづいた陸軍恐慌派はアジア開放すべしと大陸へのコミットを増やすように求め 南進を推し進めた海軍は現状維持を望み、在野右翼は反共十字軍を叫び、多くの国民は長引く中国戦線に倦んでいた。 どの方向に進むか謎のまま、米英の執り成しに従い、日本と重慶政府との休戦交渉再開だけが開始された。
 米印の市場開放の代わりに満州以外の利権を手放すように要求する英米の提言には、 日本では、やれ南京政府はどうであるの、英米の市場の不透明さだのという論点が巻き起こり たちまち議論はデッドロックに陥ってしまった。
 日本の国策に一定の動きがつくまでには、まだ時間がかかりそうだった。


9 大西洋の戦い
カニンガム
「北海の哨戒網が破れたからしかたないとはいえ、これは酷い状況だな」
 大西洋ルートの輸送船被害レポートを見たカニンガムは頭を抱えた。
 レポートには大西洋航路で総船団の10%を失ったとある。 戦闘艦艇は旧式戦艦1損傷、巡洋艦2隻が沈没、1隻が損傷、駆逐艦9隻が沈没、5隻が損傷。 一方戦果は、敵潜水艦撃沈確実10、戦果不明ながらも数隻を撃破。
 敵潜水艦隊に与えた損害も大きいが、アメリカからの投入戦力が到着までに1割失われた事は大きい影響が発生していた。 アメリカは船団の補充を行わなければならないが、そのためには、一個師団程度の予算が費やされることになる。
「敵は長距離誘導魚雷によって、こちらを集団で襲ってきます、航空制海も行なっておりますが、限界があります」
「このままでは、我が国同様にアメリカも海軍の損失に耐え切れなくなる」
 優位な海軍を生かして敵根拠地を直接叩いて、作戦能力を奪う必要があるだろうか。

「幸い、北海には開戦以来有数の海軍戦力が整っています。積極的行動で敵を封じましょう」
 参謀らも同じ考えであろう。快適必滅の英国海軍らしさは健在だった。
「アジア、インド洋、アメリカ大西洋艦隊、及び太平洋からの増援も揃った。ソ連艦隊を雌雄を決する日は近いだろう」


10 焦点
クズネツォフ
トロツキー
リトヴィノフ
トハチェフスキー

ヴァイアン
パットン
ピドー

「小官のような閑職に、お歴々の皆様が何の御用でございますか」
 指導者トロツキーとリトヴィノフ外務人民委員、トハチェフスキー総参謀長が 揃ってボルカ河川艦隊司令部のクズネツォフを訪れていた。
「同志クズネツォフ、海軍の事について相談事ができたのでな」
「親愛なる指導者、今更第一線を退いた私に相談ということもありますまい」
「君はまだ40を過ぎたばかりだろう、こんな所に引っ込んでしまうには早い歳だ」
「トハチェフスキー閣下、40で中将なら過分な出世というものです」
「私より若く元帥になっておいて、それこを何を今更、海軍は貴官あればこそ今日まで戦ってこれたのだ」
「小官は海軍の明日に責任を負いかねます」
「まぁ、それは良い。本日は貴官の慰留や粛清に来たわけではない」
 リトヴィノフが割って入った。こんなことでグズグズ話を長引かせても拗れるだけだと交渉慣れした彼は直感していた。
「実は、バルト海のデンマーク籍船を公海上で臨検したらだ。英国の海軍士官が乗っており、積荷に38センチ艦砲があった」
「…沈めたんですか」
「積荷は中立国フィンランド向けであるとデンマークの船長が言い張ったため、 臨検した艦長英国士官を根こそぎ捕縛した後は、あとを追尾して嫌がらせをするに留まった。完全に国際法に則った措置だ」
「よくもまぁ、私が艦長なら英国人を見た瞬間に撃沈してました」
「外務省に仕事を増やさんでくれ」
「お陰で陸軍に仕事が増えたがね。フィンランドはこれでレニングラードを直撃しうる強力な重砲を手にいれたことになる」
 トハチェフスキーは茶々を入れる。
「根拠地を持つ海軍にとっても由々しき事態です。どうして今まで教えてくれなかったんですか」
「今の君は元帥でも海軍人民委員でもバルト海艦隊司令長官でもない」
「冗談じゃない、こんな手抜かりを放置していたら、あっという間に海軍は全滅してしまうじゃないですか」
「放置しているのは誰かね、同志クズネツォフ」
 トロツキーがたしなめる。
「君抜きでは海軍は締まらん。そして、デンマークとフィンランドにどう対応するにもバルト海の海軍は重要だ」
 トハチェフスキーが続けて頭を下げる。
「外務省としては、一つの方法としてコペンハーゲンに砲艦外交をかけて屈服させる事を考えている。 完全にバルト海を内海にしてしまえばフィンランドも動けまい。逆に言えば、それに失敗してしまえば、 スカンディナビアは不安定化したままだ。それはこの戦争の帰趨に大いに影響する」
「同志が長く要求してきた海軍歩兵の整備について、人員を陸軍から融通する事も考える。どうか、前線に復帰して欲しい」
「同志、海軍がもしも弱ければ、英国はたちまち攻めてくる。船はなく、港は火の海だ。君はマストで吊られるぞ  バルトはおお、我らの海だ。資本主義から守りぬくんだ」
 リトヴィノフ、トハチェフスキーの説得の後に唄い上げるようにトロツキーが続けると流石にクズネツォフも断り切れない。
「では、少し考えておきます」

 英海軍のヴァイアン提督は無事にフィンランドに艦砲が送り届けられたとの情報に満足は出来なかった。
現地で砲台を設営し、扱うための海軍スタッフがソ連にとらわれてしまったし、 間を仲介したデンマークの立場は非常に苦しいものとなってしまったし、ソ連にその重要性を教えてしまった。
「何、デンマークの事で悩んでいるのかデンマークが取られたら取り返せば良い。そのための訓練をしているのだろう」
 陸海合同の上陸戦訓練の視察に来ていたパットンが気安い言葉を投げかけた。
「それは我が国の禁則事項ですのでお話できません」
「今更硬いことを言うなよ、作戦名が「クヌート」で冬季の装備を用意しているんだ。 アメリカ人をバカだと思っているのかもしらんが、これでデンマークを主戦場とわからないほどバカじゃない」
 ヴァイアンは顔をしかめた。どうやらモントゴメリー同様にパットンと英国人はソリが合わないようだ。
「あなたはフランスにいる自分の戦車軍団のことだけ心配しておれば宜しいでしょう。これは英国の仕事です」
「何だと?」
 気色ばんだパットンに慌てて周囲が仲裁に入る。まだまだ新参の軍とは埋めなければならない溝は大きいようだった。

 デンマークがにわかに注目を浴びるようになった状況をフランス外務省とピドー外相は好意的に見ていた。
 戦時通商関係調整会議の場にいるデンマークに「もし参戦すれば、現在の領土を保証する」と耳打ちした事が これほどの効果を得られるとは思わなかった。 日和見のデンマークが参戦してしまえば、最悪共産側についたとしても上陸のオプションは増える。悪い方には転ばないだろう。

11 帝国の辺境にて
ポンピドゥー
マウントバッテン

 現地に降りてみて、アルジェリア情勢は抜き差し成らなくなりつつあるとポンピドゥー官房長は感じた。 イタリアの協力で地中海からの影響は限定されてはいたが、ソ連を策源とした民族派への扇動は続いていた。 イタリアはイギリスではないので、地中海を完全にシャットアウトなど出来はしない。
 辛抱強く対話を進めていくにしても多文化主義、フランス主義、民族主義と言葉にするには複雑過ぎる。 現地化した植民地官僚、その下僚としてフランス化した現地人、フランス化に反対する人、動員を嫌うもの それぞれに主張があり願望があり、そして、人的資源の限界というものがある。

戦時動員で着実に悪化した環境はジリジリとフランスへの不満の水脈を上げつつあった。
「植民地からの追加兵力徴収は、現状では困難」
このことから、ポンヒドゥーはいっそう共和国の文化的高揚が必要と判断し、建設中の文化施設をいっそう急ごうと決意を新たにするのであった。

 インド総督として、艦隊やインド師団の移送に多忙な日々を送っている マウントバッテンだが、力を入れている対日外交が上手くいかない事には手を焼いていた。 能代にロケットの共同実験場を作る案はにべもなく却下された。
 どうやら海軍は積極的であるものの、流石に日本国内に外国の軍事的基地を設営することは 陸軍や内務省が強行に反対し、海軍の島であるトラック島あたりならばなんとか…という微妙な返答しか帰って来なかった。 極東方面に新たな対ソヴィエトの前進拠点を築こうとするマウントバッテンの目論見は見事に外れてしまった。
「中国はこのまま蒋介石の権威が落ちつつければ赤化の危険性が生まれる。日本はどうなるかわからん」
 そうした感想がマウントバッテンの抱いた極東情勢である。 この二国次第ではまたぞろ、インドの独立を目指す動きが活発化する可能性がある。 日本が乱れれば独立した新興国についても、悪影響が生じ、資源確保が滞る可能性もある。 マウントバッテンのやることはまだまだ片付く様子を見せていない。


12 ソ連邦ドイツ共和国
フルシチョフ
ノイマイスター
パウルス
ポルシェ

 ドイツのミーアシャイト派の失脚によって、ドイツ官僚機構の再構築が必要となり、 ソ連本国からフルシチョフとポルシェがほぼ常駐する形でその指揮をとるようになっていた。 また、トロツキーの信頼厚いパウルスは戦線の要となる戦車戦力を集中配備された戦略予備軍たる機動打撃集団の指揮を任されるようになった。 ソ連下のドイツは大幅な変革を迎えつつある。未だ仮称の段階ではあるが、それは、ソ連邦内のいち共和国としてのドイツとしての再生であった。

「ソ連本国でも、Ta152の採用が決まったよ」
 実に嬉しげにポルシェがノイマイスターに告げた。ソ連の技術行政を取り仕切るポルシェであったが、 純粋に祖国の技術が認められる事を喜んでいる。
「ほう、それは良かった…時にソ連本国の様子についてはいかがですか」
 独断先行する形で作った機体が一定の成果を納めたことにノイマイスターは満足しつつ、尋ねた。
「…あまり良くはないね、経済的統制は段階的に強くせざるをえない。女子の工員動員も一段と進めている」
「しっかり手綱は締めて下さい。戦争に勝ったはいいが、ソ連が破綻したでは、いの一番に収奪の対象になるのはドイツの工業力でしょう」
「心がけよう」

「ところで戦車の開発はいかがな状況ですか」
 パウルスが関心の事案について尋ねる。やはりドイツ人にとってモスクワの情報の流れは少ない。それを補う良いツテとなっている。
「このペースで行けば46年初頭には、100ミリ戦車砲を搭載した新しい中戦車がロールアウトできるだろう。 それよりも凄いのはその後の重戦車だ。こちらは130ミリカノン砲を搭載する予定だ。多少の空襲にも耐えるよう上部にも十分な装甲を加える。 この戦車の前面装甲を抜ける戦車は世界中探しても存在しないだろう。私はこの戦車をムィシと呼んでいる」
「それは心強い」
 後者の実現性に多少の不安を感じつつもパウルスは答えた。

「ところで、本国の見積りでは敵の反攻主体はどこだと考えているのだろう 命令ではハンブルク前面の上陸作戦への守りをあらゆるものに優先して固めるようにしているが」
「クレムリンは、敵の反攻上陸はデンマークを疑い始めているが、トハチェフスキー元帥はハンブルク前面という確信を持っているようだ。 沿岸砲、機雷の集中投入によって防御力を高め、将軍の機動反撃によって海に追い落とすことを期待していると」
 パウルスは苦笑いした。その時にフランス、低地諸国、更にはデンマークやフィンランドとの同時行動となれば、 およそ全てに対処する事は出来ない。そうなった時にパウルスどうするかが戦況の決定的要因となるだろう。

「そういえば、バイエルンは孤立の途を歩んでおり、ヒトラーの政権は極めて不安定化しつつある。 ノイマイスター君、率直に言ってどう思うかね?革命工作を仕掛け時だと思うか?」
 フルシチョフが意地悪げに尋ねる。ノイマイスターの動きには目を光らせている。 ノイマイスターはバイエルン近隣に新たな航空機生産体制を構築しつつある。
「求心力が落ちているならば、バイエルンから協力を引き出すことはやぶさかではありませんが、それ以上は私の決断するところではありません」
 フルシチョフは頷いた。こいつは先代とは違い、ちゃんと分を分かっている。
「ところで、ドイツ国内の防空についてはより一層ドイツ防空軍にゆだねても良いかと思っているのだが、その用意はあるか」
「現状では戦力不足です。大規模な予算の追加を頂きたい。自らの安全をドイツ人によって守ることは大いに国威をあげることでしょう」
「同志トロツキーに伝えておこう。ああ、それと西側が潜水艦で新たに工作員を送り込みつつあるようだ。 私の目がドイツ全土に行き届くように体制を整えつつあるが、諸君も身辺の安全には気をつけろ」
 その言葉に全員の身が引き締まった。フルシチョフの下、名実ともにドイツはソ連になりつつあるのだ。


12 空の苦悩
マカロフ
ドュパイユ

「ようやく我々もジェット機を手に入れたと思ったが、期待はずれだったな」
 Yak-15を前にマカロフは嘆いた。使いづらい上に最高速はドイツのTa152に劣るというものでは、甲斐がないというものだ。
「ドイツの技術を積極的に盛り込んだ次の機体に期待するしかないか、気に入らないが」
 つまらない冗談で自らを慰めざるを得ない。今はソ連空軍も地上支援の要請が少なくなり、 仏軍の行動も沈静化しているから持っているようなものの、変わって現れた米軍の物量は報告だけでも脅威を感じ取れるものだ。 これをどう迎え撃つか、イギリスに習いレーダーを利用した効率的迎撃準備を始めているが、どこまでその準備が間に合うかはやってみないとわからない。

 一方、ドゥパイユも苦い顔をしていた。今回撃墜したソ連機はおよそ400機に対して、連合国が失った機体は600機。 損害の多くが英国本土に残していた旧式機だったとは言え、キレルシオを戻すことは出来なかった。 連合国の航空戦力は急速にソ連に取り残されつつあるように感じられてならなかった。 それに、アメリカからの増援が予定に任せないのも気になるところだ。今回増強されたのは戦闘機を中心に900機。 頼りにはなるが、このペースでは、航空撃滅戦を行った場合の消耗戦に耐えられるか不安が残る。
「大西洋の輸送力を強化する必要があるな」


13 プロパガンダ
ワレンシュタイン

「ケルン市にて、当方の軍が虐殺行為を行ったというのは全くの濡れ衣である!」
 ワレンシュタインは強い口調で、会見に臨んでいた。
「ローマイヤー元帥に英国からナイト・グランド・クロス勲章が与えられた事に対するソ連が悪質なデマを流している 国際的信頼を傷つけたくなければ、ただちにこのようなことはやめるべきだ」
「ソ連側は自由ドイツ軍の戦意が低下中と喧伝しておりますが」
「既に自由ドイツ軍は再編を終え、戦意は充実している。 昨今はソ連はわが軍によって被害を受けた市民の声などというものを流しているが、事実無根である。支配下にある住民に無理やり証言させている」
「この事に対しての対抗措置は考えておられますか」
「我々はドイツ国民として、あらゆる措置を用いてソ連に抵抗する」

第三国外交データ

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